これは2008年10月に発売された読売新聞記者本人の闘病体験が生々しく書かれた本です。
そして、闘病体験を「私のうつノート」と題した記事を読売新聞に連載したものをまとめた本である。しかも本人も本名で登場し、その上、最新の「うつ医療」の問題などがまとめられた本である。
ひとつの大きなキーワードとして「復職」というのがあるが、これは企業も休職中患者も未だ良い解決策を模索中であることが浮き彫りになっており、また身近な知り合いにもそこで苦しんでいる人が少なくないことを改めて気付かされた。
本の構成としては、
1 体験編(私のうつノート―双極性障害の記録
うつ闘病中の同僚記者と)
2 情報編(変わる常識
回復めざして
職場復帰)
といった感じで、闘病体験と情報編と構成されている。
体験編に関しては患者である記者本人とそのまわり、上司の視点で記事が書かれており、どちらの立場からもその問題を描写している。
また、情報編では最近の復職支援プログラムを提供するサービスの紹介や、企業が復職にあたり、どのような基準で復職を認定するかの判定会議の仕組みが作られたりなどの記載がある。
サラリーマンにとって、いずれは復職を希望する人がほとんどだが、ストレス環境においてはいけない患者にとってこの復職前後に大きなストレスに置かれる状況も浮き彫りになってきた。
そういった情報も含め、メンタルヘルスに取り組む企業の人事部や患者本人双方にとって、この本は短時間でその問題を確認して、どうすべきかを考えさせられる一冊になると思います。
特にここで登場している記者本人が実名で病名と家族構成を明らかに、典型的なサラリーマン世帯でこのうつとの闘病にあたって、家族の理解やその障害についても生々しく書かれているので、家庭を持っているサラリーマン世帯にとっては大いに参考になるかもしれない。
なお、この本は「私のうつノート」とありますが、正確には当初はうつ病として診断されていたが、結果として双極性障害と診断されている点は注意しておきたい。この症状は正しく診断されるのが難しく、治ったように思える状態が実は「そう状態」であった、とある。
ボクも時々ハイテンションなことがありますが、実は「そう状態」なのではないかと、そう思った(ここはダジャレです)。
冗談は置いといて、患者とそのまわりの方は一度客観的に患者本人とその周りからの視点を俯瞰的に見ることができるこの本を読まれることをお勧めします。