著者のやままさんより献本いただいての読書感想文です。

「喫茶アメリカンについて言いたいことやまやまです」はAmazon Kindleで読める電子書籍。今回はMac版Kindleで拝読。
まず、この表紙の画像、読む前はかわいらしいイラストだな、と思ってページを読み始めたのですが、読み終えてこの表紙の素晴らしさに改めて気づかされました。
本当にこの書籍の内容を凝縮して言い表している、と言っても過言では無いほど。
一見、分厚目に見えるサンドイッチも実際にそのものだったりするし、さらに選ばれたサンドはきっとタマゴサンド。
文章中に登場するメニュー名で見てもチキンサンド32件に対してタマゴサンドの登場回数は36件。一番人気と言われているタマゴサンドだが、その他のメニューも実は多く取り上げられている。
しかし、「ああ、まずはタマゴサンドを食べてみたい」というのが読書後の感想だ。
(ちなみに「ビーフシチュー」ワードは97回登場する)
そして、そのタマゴサンドに登頂しているイラスト。
ようやく登り切ったエベレストのように、5年かけて「アメリカン」の旗を立てることが出来たというのも、読んだ後にうなづける。
言いたいことはやまやまなんだけど、これは「登り続けた山」だったんだな、という比喩表現も効いている。
忘れてはならないのが、このサンドを載せているお皿だ。本書の写真を見ている限り、実際にこのようなお皿で出てくるわけでは無さそうだが、カフェオレのカップ&ソーサーの話からも、その伏線を感じ取れることが出来る。素敵なカップで飲み物が出てくるのだ。
表紙のイラストのクリエイティブだけでも1時間ぐらい語れそうだが、その表紙の表現していることがこの一冊にぎゅっとまとめられている。
おなかすいているときに読み進んではいけない本
この本を読んで唯一後悔したことは、夕食前に読むな、ということです。
文章の表現力も個性的で豊かなところもあり、手にとるようにしてその美味しさが伝わってきます。きっと写真はスマホで撮ったレベルの簡易的なものかもしれないけど、文章の端々にその美味しさを伝える急所を押さえてくれるポイントが節々にあります。
はい、ヨダレが出てしまいそうなんですよ、夕食前に読むと。おなかすきます。
これは一度訪問すべきですよね、と思いながら読み進めていました。
そうさせるのは、筆者のやままさんがこのアメリカンでサンドの美味しささだけでなくお店や店主に感銘を受けて、熱量をもって伝えているからこそ。
お店の移り変わりとブログ文体の移り変わりがシンクロする
本書は5年間にブログ上で書き続けてきた喫茶アメリカンについての訪問記をまとめて一冊にしたところもポイント。
30年以上続いたお店も、なかなか変わらないところだけでなく、変わるところもあり、その変化も克明にレポートされている。
特に物価上昇に伴う値上げなどはわかりやすいのですが、季節の移り変わりを感じさせる店主の言葉もステキですね。
途中、ブログの文体が急に変わるポイントがあるのですがその直後の流れも面白い。
※注:2018年5月にブログをリニューアルし、文体を常体から敬体に変えました。以降の「アメリカンレポート」は敬体文になります。
やまま あき. 喫茶アメリカンについて言いたいことやまやまです (Kindle の位置No.1460-1461). Kindle 版.
文体が変わった直後は、急にたどたどしい感じになるのです。その変化も面白いのですが、その形が次第に馴染んでいく変化も面白い。
まるで、今まで一般のお店対お客という関係性から、徐々にお店の人との距離が近づいているのを明確に感じたのもこのあたりでしょう。
ここもこの本を読み進めていく中の醍醐味でしょう。
ブログの再編集から生まれる書籍の可能性
ブログは時系列でまとめるストック情報の場としても最適です。
5年間の訪問記をこのように一冊にまとめるだけでも価値は出せそうです。実際に、数時間でこの本を読んで、そのお店の変化や様々なメニューの追体験ができました。
この本の良いところは、そのブログ記事をまとめた後の部分ですね。
「主観たっぷりアメリカンガイド」といったガイド的な役割を持ったパートや「男気店主原口誠さんにインタビュー」パートなど主観的なブログ記事におわることなく、客観的なお店の情報や、店主のバックグラウンドストーリーと立体的に感じる構成で一冊楽しめました。
単純にブログ記事を並べるだけでもそれはそれで価値はあるのですが、視点を変えたパートを持つことによって、この1冊でこの小さな伝説の店をまとめきっているところも感じます。
その編集がいままで、ブログ上で無料で読めていたものに価値を付加するものです。
これを読んでなんだかうらやましいと思う部分もあり、ボクもチャレンジしてみたいと思いました。
喫茶アメリカンに行きたい
読後の感想はそうなるでしょう。そうなるぐらい著者のやままさんの思いが伝わってきます。
少なくとも歌舞伎座の近くを通りかかったら思い出して足を運んでしまうでしょう。そう思える一冊でした。
Kindle Unlimitedでもいま読めるようですので、ぜひダウンロードして読んでみてください。
喫茶アメリカンについて言いたいことやまやまです: 5年間の主観たっぷり研究記録 (やまま書房)
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